「働き方」の教科書 [読書日記626]

題名:「働き方」の教科書 「無敵の50代」になるための仕事と人生の基本

著者:出口 治明(でぐち・はるあき)

出版:新潮社

価格:1400円+税(2014年9月発行)

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友達さんお薦めの本です。

(ただし友達さんが読んだ本は、今年出版された文庫版。私は三年前に出版された方を読みました)

著者の出口さんは、2006年まで日本生命に勤務され、四〇代で国際業務部長まで勤めた方です。

四〇代後半で当時の社長と意見が対立し、五〇代は子会社に左遷され、2006年に退職。

六〇代でライフネット生命を立ち上げ、今に至っているそうです。

そんな方の説く「働き方」ですから、説得力があります。

目次を紹介します。

 序 章 人生は「悔いなし、遺産なし」

 第一章 人間と人生をどう考えるか

 第二章 仕事と人生の関係

 第三章 二〇代の人に伝えたいこと

 第四章 三〇代、四〇代のうちにやっておくべきこと

 第五章 五〇代になったら何をするか

 第六章 あなたが生きる これから三〇年の世界

 終 章 世界経営計画のサブシステムを生きる

気に入った文章を引用します。

【第一章 人間と人生をどう考えるか】から。

“最近よく思うのは、人生を無駄にする三つの行動です。

 「済んだことに愚痴を言う」

 「人を羨ましいと思う」

 「人によく思われたいと思う」”(45p)

私自身、三番目の「人によく思われたい」という気持ちが捨てきれません。

【第二章 仕事と人生の関係】から。

“どんなビジネスモデルでも、お金と時間を無制限にかければ再現できます。(略)

 だとすると、差別化の要因になり得るのは、従業員のやる気とモチベーションに尽きるということになります。

 「朝起きて、今日も会社に行くのが本当に楽しい」

 「お客さまに良いサービスを提供することを考えると、ワクワクする」

 従業員がそう感じていれば、それぞれがいろいろなことを考えるようになります”(85p)

“差別化の要因になり得るのは、従業員のやる気とモチベーション”と言い切れる点が素晴らしいですね。

第二章の一節「幸運な時代の終焉」からも引用しましょう。

“伝統的な日本企業は、仕事の成果よりも従業員のロイヤリティ(忠誠心)を評価する傾向があります。(略)

 このガラパゴス的な労働慣行が行なわれている原因は、三つの前提条件で説明できます。すなわち「キャッチアップ型モデル」「人口増加」「高度成長」です”(102p)

これは、嫌と言うほど感じます(苦笑)。

【第四章 三〇代、四〇代のうちにやっておくべきこと】から。

“人間のリアルな世界ではおよそ立派な人などいないので、暇になるとろくなことを考えません。せいぜい上司の悪口を言うか、仕事をしないで遊ぶのが関の山です。

 すべてのメンバーが相対的に幸福になるためには、勤務時間中に余計なことを考える暇がない程度の仕事量があることがいちばんです。その加減を見極め、うまく差配するのが上司の役割なのです”(137p)

【第六章 あなたが生きる これから三〇年の世界】では、「これからの日本が生き残るには、女性の活躍できる社会にすること」とフランスの例を引いて説明しています。

“フランスは「シラク三原則」を定め、赤ちゃんを産んでも経済的に苦しくならない仕組みを構築しました。(略)

 赤ちゃんが増えるにしたがって給付を増やせば、収入が安定して産みやすくなるという発想です。逆に言えば、赤ちゃんを何人産んでも女性が経済的に困らないようにしたということです”(218p)

なお、2013年時点での日本の男女平等の達成レベルは“(ダボス会議を主宰する世界経済フォーラムの発表によると)136ヵ国中、105位という目も当てられない水準”(221p)と嘆いています。

最後に、【第三章 二〇代の人に伝えたいこと】にあった次の文章を就活間近の大学生の子どもに見せました。

“就職は相性で十分:

 大学生向けの就活関係の本には、次のように書かれていたりします。

 「十年後に輝くような企業を探して就職しよう」

 学生を惑わすにもほどがあります。十年後に輝くような企業を見つけることができるのであれば、日本人は誰もがミリオネアになっているはずです。その企業の株を購入しておけば、十年後の株価は何倍、何十倍になっているはずだからです。(略)

 つまり、光り輝く企業を見つけなさいと言っている当の大人自身が、誰も十年後のことなどわかっていないのです”(96p)

五〇代の私にも、読み応えのある「教科書」でした。

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出口 治明(でぐち・はるあき)

ライフネット生命保険株式会社会長兼CEO。

1948年、三重県美杉村生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。

同年、ネットライフ企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴い現社名に変更。

2013年より現職。旅と読書が好きで、訪れた世界の都市は1000以上、読んだ本は1万冊に上る。

著書に『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社)、『「思考軸」をつくれ』(英知出版)、『仕事に効く教養としての「世界史」』(祥伝社)、『ビジネスに効く最強の「読書」』(日経BP)などがある。